

かつて、バスはシャーシと呼ばれる「自動車として走るための機械系」とボディ(車体)とが独立していて、それぞれ別々の会社で生産されていた。シャーシメーカーの多くは系列の車体メーカーをもっていて、製造するバスの多くにそこで車体を架装していたが、一方で系列に属さない独立系の車体専門メーカーが存在し、様々なメーカーのシャーシに同じ基本設計のボディを架装しているところも有った。たとえば西日本車体工業や富士重工業などは、国内でシャーシを生産している4メーカー全てに同じ形式のボディを架装したものを販売していた。
NPOバス保存会の保存車である元・山形交通TSD40はいすゞ自動車が製造した全輪駆動トラック用シャーシに、新潟市にあるボディメーカーの北村製作所がボディを架装したもの。北村製作所はバス車体事業開始当初は各社のシャーシに架装していた、ある時期から基本的にいすゞ車のみ架装するようになった。
この北村製作所が昭和末期にいすゞLV314系のシャーシに架装して、地元の新潟交通限定で100両納車したのが「なまず」とよばれるバス。この呼び名はフロント部の形状に由来するとのこと。画像は2008年6月にバス愛好家有志が実施した貸切ツアーの際、許可を得て営業所内で撮影した物。2012年に最後の一台が引退し、新潟市中央区の鳥屋野(とやの)交通公園に保存されている。
近年では特装車を除き、ボディとシャーシを同じメーカーまたは系列会社で生産することが当たり前になり、独立系車体メーカーというビジネス自体が成立しなくなった。そのため西日本車体工業は会社そのものが解散し、富士重工業、北村製作所はバス車体架装事業から撤退した。(福本)